1980年代のサラリーマンが主人公『素顔の時間』(眉村 卓)

1980年6月から1983年5月にかけて雑誌「野生時代」に掲載された短編7つがおさめられた短編集。

最も印象深かったのは一編目の『点滅』だ。
“所有欲”という感染症の存在を感じ感染することを恐れている大学教授とその教授にかかわる雑誌の編集者の物語だ。
さあこれからバブルがはじまろうという時に書かれたものなので、世の中が景気に沸き熱に浮かされたようにお金を湯水のように使いはじめていたそんな様子に眉村さんは発想を得たものなのかな。
印象に残ったわけは、なんだか最近資本主義が病気のように感じているからだ。所有する一握りの層と持たざるもの格差はどんどん広がっている。持つものはさらに追求していく。何かおかしい。所有欲というのが病気とみなされてもおなしくないのではないか。

巻末に眉村さん自筆という年譜が付いている。誕生から昭和58年まで、いつどの作品が書かれたのかわかるのでファンとしては貴重なものだと思う。

『素顔の時間』(角川文庫、眉村 卓)

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