『日本橋バビロン』(小林 信彦)

作家小林信彦は、江戸時代から続いていた日本橋の和菓子屋「立花屋」に生まれた。この物語は祖父の時代から父の死までの実話である。作者や家族等の記憶を紡ぎながら語られている。戦前の日本橋界隈の様子が様々なエピソードを交えて写実的に秀逸な文章で書き上げているのにまず感心する。文章がほれぼれするほどうまい。
ところが、結核を患った父が死を迎えるあたりから様変わりする。息子である作者から見ても老舗を背負って商売をしていくには向いてない父。その父が面倒をみていた弟たちの恩を仇で返すような態度への怒りが容赦なく炸裂する。50年以上も前の出来事とその時の感情とはいえ明らかに叔父たちのことなのだけど強烈に非難している。
最後の部分がかなり印象を左右してしまったが、日本の昔の下町の様子を感じたい方にぜひオススメの一冊だ。




"日本橋バビロン" (小林 信彦)

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